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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2014/10/04

「建物疎開」が、あった

札幌建築鑑賞会の「大人の遠足」2014秋の編(10月25、26日)では、創成川界隈を歩きます。
本日はその予習を兼ねた紹介です。

創成川にほど近いHさん宅です。
南5条 Hさん宅
木造の母屋と石蔵が一緒に残っているお宅は、札幌ではとても珍しくなったと思います。大体は母屋のほうが建て替えられて、石蔵が後々まで残る例が多いようです。戦前から両方残っているといえば、今回の遠足で歩く地域にあるTさん宅、札幌駅北口の旧金田質店、円山のSさん宅(蔵は鉄板でオーバーオール)、ほかにどこがあったかな…。

Hさん宅の蔵は、札幌ではこれまた非常に珍しく、軟石ではありません。屋根は瓦葺きです。
南5条 Hさん宅②
観音開きの扉は、幾重にも蛇腹が重ねられています。

母屋はサイディングされていますが、元は下見板貼りでした。
私は二十数年前、当時お住まいだったHさんに建物のことをお聞きしたことがあります。Hさんは1931(昭和6)年、この家に養女として来たとのことで、「(建物のことは)詳しくはわからないが、もう百年くらいたっていると思う」とおっしゃっていました。「百年くらい」というのはかなりアバウトですが、明治後期の建築でしょうか。だとすれば、札幌に現存する住宅としては、かなり古い部類になります。

石蔵も含め、このお宅にあまり洋風の雰囲気が感じられないのは、年代的な背景によるのかもしれません。明治初期の開拓使の洋風が一段落し、大正から昭和初期の和洋折衷には合間があるから…かな。石蔵の建築年代も定かではありませんが、「なぜ札幌軟石にしなかったんだろう?」というのは、謎です。石山から馬車鉄道が敷かれ、軟石の大量運搬を可能にしたのが、明治40年代前半。もしかしたらその前に建てられたからか? でも、それだったら土蔵造にしないか?

二十数年前にHさんの話を聞き取った私のメモによると、建物は戦前もっと広かったのだが、戦時中、一部を取り壊し、残った家屋が今の姿だということでした。隣にあった伊藤組の木材工場が軍に接収されて「愛国工場」になった際、周囲の建物を取り壊すように軍に命じられたからだそうです。

ちょうどHさん宅近くの、現在の国道36号沿いでは戦時中に「建物疎開」を命じられたという歴史があったと思いますが、軍需工場の周囲でもそういうことがあったのですね。

またまた『最新調査札幌明細案内図』1928(昭和3)年で確かめました。
南5条 Hさん宅③
確かに、Hさん宅(赤丸のところ)の南側に隣接して「伊藤組木工場」があります(黄線)。Hさん宅は周囲の敷地と比べてもかなり広いことが窺われます。

先月、鑑賞会のスタッフがこのあたりを下見で歩いたとき、通りかかったご男性で古くからお住まいだという方にお聞きしたら、Hさんはこの辺の地主さんだったというお話でした。ただ地主をやるだけのためにここにお住まいだったわけでもなかろうと思い、ある史料をひもといて調べてみました。「ある史料」というのは、『昭和九年四月一日現在 電話番號簿 札幌郵便局』です。Hさんと同じ住所で同じ苗字の方が一人載っていて、「農業」となっていました。余談ながら、この時代の電話番号帳は、個人や屋号の五十音順で、右端に職業が記されていて、大変興味深いです。さらに余談ながら、当時は「郵便局」が電話番号簿を出していたのですね。逓信事業ですな。
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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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