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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 新型冠状病毒退散祈願

2020/05/23

石の蔵のしるし

 4か月ほど前、なのでもう古い話ですが、「札幌建築クラブ」という会合で「講演」をする機会をいただきました。いわゆるゼネコンや設計・コンサルの会社、道や国の建築部門などに属する人たちの勉強会です。「専門家を前に、素人の私が恐れ多いことで」と躊躇ったのですが、「新年交礼会の前段ですので、肩の凝らない話をしていただければ結構ですから」と請われました。まあ前座の余興と心得て、小一時間ほど演者を務めたしだいです。「札幌時空逍遥~街を歩き、街を楽しみ、街を知る」というテーマで、つまりは拙ブログで遊んでいる世界をかいつまんで披露しました。1月の末、この種の会合がまだ封印されていなかったときです。 
 勉強会と聞いていたので、若手や中堅どころがメンバーなのかと思いきや、驚きました。札幌のⅠ組土建の社長をはじめ地元のゼネコンの役員、大手の札幌支店長や各社の幹部といったお歴々です。札幌(のみならず道内、全国)のまちづくりを牽引する要職にある方々といってもいいでしょう。そういう面々を前に拙ブログで綴っている話をすることになろうとは、世の中も変わったものです。
 後段の交礼会で、皆さんとても楽しそうに聴いてくださった感触が伝わってきました。超高層のビルを建てるといった再開発事業など、参加者がふだん関わっている世界は、拙ブログの価値観(というものがあるか?)とはベクトルがともすれば相反するかもしれません。という先入観を私は抱いてもいたのですが、根底では相通じる思いがあるなあと感じました。
 例えば、JR苗穂駅周辺の話題です(2020.1.242014.12.28ブログほか参照)。新駅周辺のプロジェクトにも参画しているⅠ建設の部長さんが、「うちの会社の近くで、社員も通勤に使っているのですが、そんな話があったとは知りませんでした」と興味深そうに聴いてくれました。手前味噌ながら、「みんな、実は好きなんだよなあ」と確信したものです。これを機に、時空逍遥思想を土木建設業界にも蔓延させることとしましょう。

 本日(5月23日)北海道新聞朝刊(札幌圏)に「札幌軟石の部材 再利用」という記事が載りました。
 ↓
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/423471?rct=l_sapporo
 北区北8条西1丁目、札幌駅北口にある石蔵のことです(3月31日ブログ参照)。この街区では再開発事業で、超高層ビルの建設が計画されてきました。例によってというべきか、こぼれ話を記します。
 リード文によると「施工業者は当初、蔵を解体して撤去する計画だったが、専門家や市民からの保存・活用を求める声を受け、今春、札幌軟石の部材を再利用できるように取り出し、再開発事業のビルの内装や外構に生かすことを決めた」そうです。本文には「当初の方針を転換」したともあります。
 「保存・活用を求める声」の一つは、札幌市の「都市景観審議会」の「景観アドバイス部会」(本年1月23日開催)でしょう。
 ↓
http://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/singikai/keikan_advice/documents/r01_no5_kouhyoushiryou.pdf
 前後して、本件再開発事業に携わる当事者も方策に腐心されていたようです。記事にも登場する「軟石や」のOさんやNPO法人れきけんがアシストしたと聞きます。
 3月5日の道新「読者の声」に、「『歴史の証』 残す道探って」という投稿が載りました。札幌に「転勤をきっかけに住み始めた」という会社員の方です。「石の蔵」へ寄せる思いがしたためられていました。

 本件石蔵の建つ地域で再開発事業が構想されたのはかなり前からで、準備組合が設立されたのは2009(平成21)年です(注①)。2012(平成24)年には、再開発事業にともなう「環境影響評価方法書」への意見を札幌市が募りました。平たく言えば、環境に影響のある大規模な事業に際しての市民参加の手続きです。
 せっかくの機会なので、このとき私は次のような意見を出しました(太字)。
 対象事業の区域内に「石の蔵ぎゃらりぃはやし」と「居酒屋燔(ばん)」という古い建物があります。アセスメントでこれらの建物に係る環境保全上、なかんづく景観上の意義を十分評価されるよう要望します。

 これに対する札幌市の見解は以下のとおりでした(太字)。
 事業者は、「石のぎゃらりぃはやし」および「居酒屋燔」の保存、活用は難しいと考えていますが、例えば施設建築物の共用スペースの一部に札幌軟石を使用するなど、地域の歴史と文化を伝える景観資源の継承について検討していく考えでおります。
 札幌市としても事業者の意見を尊重しつつ、その継承方法について、事業者とともに検討を進めたいと考えております。
  

 この結果が反映されたのか、2014(平成26)年の札幌市の環境影響評価審議会の答申書や札幌市長の意見に以下の文言が盛り込まれました(太字、末注②)。
 「石の蔵ギャラリー」について
 当該事業予定地に存在する「石の蔵ギャラリー」については、景観法に基づく景観重要建築物には指定されていないが、札幌軟石を使用するなど、当時の札幌の地域の歴史を残すものであり、上記2の景観形成方針には「文化のかおりたかく」との記述もある。
 したがって事業予定地に建設する建築物において何らかの活用方法を検討すること。


 私の要望は「建物を保存してください」ではありません。アセスメントで「評価してください」です。「高く」評価してくれ、でもありません。評価の対象にしてほしい、という趣旨です。民間施行の事業に対して、直接的な利害関係を持たない一市民がモノ申すとしたらこの程度かと私は思っていました。
 その意見を出してから、すでに8年。ここ最近の動向は、私は正直言って傍観していただけでした。いや、傍観すらしていたかどうか、心もとない。建物解体のぎりぎりの局面でも水面下にあって、さまざまな模索、尽力があったことを知りました。今後、実際に札幌軟石がどのように生かされていくか、判りません。もし建物に軟石が使われていたら、その一つにもさまざまな人の思いが詰まっているのだなあと鑑みたいと思います。

  以下、蛇足を二三。
  前述の本日道新記事で、私が「戦前からの母屋が残るのは市内で唯一」というのは、「質屋さんの建物で、戦前築の主屋と蔵が一緒に遺る(っていた)のは」という意味です。質屋さん建築以外でしたら、秋野総本店薬局とか、ほかにもあります。
 「築50年を超す札幌軟石の建物は市内に約300棟あるが、大正以前の建物は35棟という」。これは、「わかっている限りでは」です。

 元「石の蔵ぎゃらりぃ」の蔵の正面妻壁です。
旧金田質店 蔵の正面妻壁
 5月21日ブログで私は、印のところが鉄板で蓋されていることを記しました。背面のほうは「○タ」と刻まれているのを先日初めて知り、正面は二代目の持ち主が隠したのかなと想像したのです。
 鉄板の蓋の部分の画像を拡大すると、何となく文字が浮き出ているようにも見えます。○であるのは間違いないと思いますが、こちらもやはり「○タ」なのだろうか。それとも別の字かしら。

 注①:北海道新聞2014年2月20日記事「札幌・北区『北8西1』 再開発事業 遅れも」
 注②:札幌市サイト「北8西1地区第一種市街地再開発事業」ページ参照
 ↓ 
 http://www.city.sapporo.jp/kankyo/assessment/itiran/jourei05/index.html
 文中「上記2の景観形成方針」とは、「札幌市景観計画」の「札幌駅北口地区景観計画重点区域」におけるそれを指す。札幌市サイト「札幌市景観計画」ページ参照
 ↓
http://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/keikankeikaku/keikaku.html#naiyou
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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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