FC2ブログ

札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 新型冠状病毒退散祈願

2020/05/20

白石区と豊平区の区境をめぐる地理的特異点 ⑧

 豊平区の歴史、というかその前身の豊平町、豊平村の歴史を振り返り、今さらながらですが奇妙を覚えました。
 
 豊平というのはアイヌ語の「トゥイェ・ピラ」(崩れた崖)に由来するそうです(末注①)。具体的にどこを指したか必ずしも明確ではありませんが、豊平川に近い場所のようです。明治になって札幌本道(現在の国道36号の原形)の豊平川に近くにできた列村が、豊平村と命名されました。
 その豊平村(便宜的に、以下「旧豊平村」という)は1902(明治35)年に平岸村、月寒村と合わさって豊平村(以下「新豊平村」という)となり、1908(明治41)年に豊平町となります。

 かつての豊平町を表わす地図です(元図は『豊平町史』1967年「豊平町内地図」)。
豊平町史 豊平町内地図  旧豊平村を加筆
 元図に黄色の網掛けで旧豊平村を加えました。これを合わせたのが当初の新豊平村(後の豊平町)です。黄色の網掛けは一部、元図からはみ出ています。はみ出ているのは1910(明治43)年、札幌区に編入された部分です。

 この地図を観ると、豊平町の面積の大部分がかつての平岸村と月寒村だったことがわかります。もともと旧豊平村の割合は小さかったのですが、その一部が札幌区編入で外れたことにより、さらにごく小さくなりました。結果として、豊平という地名が豊平町内からなくなりました(末注②)。豊平は札幌区(後の札幌市)内の地名で生きますが、上掲図で示されるように豊平町内の字名からは消えます。町名に冠していながら、豊平町に豊平なし。冒頭に述べた「奇妙」です。
 
 旧豊平村が札幌区(後の札幌市)に編入された背景には、新豊平村(後の豊平町)の事情がありました。旧豊平村と平岸村、月寒村の寄り合い所帯だったことです。
 豊平村は全域が純農村とはいえず、大字豊平村が商業地域、大字平岸・月寒村は農業地域という具合に性格の異なる三村が併合していたために、地域的な利害も異にし、村治上では対立する問題も多く〝難治村〟とされていた(末注③、引用文中の「豊平村」は三村合体した新豊平村、後の豊平町のこと。「大字豊平村」が旧豊平村)。
 旧豊平村が外れて平岸村と月寒村が豊平町の主体になったことで、〝難治村〟状態が解消されていきました。

 旧豊平村の区域(前掲図の黄色の網掛け)を現在図に示します。
現在図 旧豊平村区域 札幌区編入部分
 赤い太実線で囲ったところです。このうち橙色で網掛けした一帯が1910年、札幌区(後の札幌市)に編入されました。現在の町名でいうと豊平、水車町、旭町です。白地の一帯が豊平町に残りました。現在の地名は美園です。前掲豊平町の地図で前述した「ごく小さく」なった部分がこれに当たります。黄色の矢印を付けた先が、この間テーマにしてきた境界線の特異点です。
 
 美園は、旧豊平村でありながら札幌区(後の札幌市)に編入されずに豊平町に残ったことから、「残村」と呼ばれたこともあったそうです(末注④)。残村とはいかにも直截的なネーミングを、私は特異点と絡めたくなってしまいます。札幌市と豊平町に分かれた旧村の分かれ目が特異点です。
 美園は「豊平ではもっとも古く水田を拓き、米作に成功した地域」でした(末注⑤)。自説に牽強付会して恐縮ながら、列村の旧豊平村にあって札幌区に近い商業地域(現在の町名「豊平」のあたり)の幅(札幌本道に対する奥行き)が狭く、早くから水田が拓けた美園の幅が広い(奥行きが深い)ことに納得してしまうのです。農業地帯のほうが、面的な広がりを要します。
 旧豊平村にありながら(と繰り返しますが)平岸・月寒主導の豊平町に残村として組み込まれ、自らは豊平の名前を引き継がなかった美園。残村そのものが、特異点に見えてきました。

 注①:山田秀三『札幌のアイヌ地名を尋ねて』1965年、pp.133-134、『さっぽろ文庫1 札幌地名考』1977年、p.84、関秀志編『札幌の地名がわかる本』2018年、p.90、pp.386-387
 注②:当初は「大字豊平村」の名前が残っていたが、1944(昭和19)年に「美園」となった。『新札幌市史 第3巻 通史3』1993年、p.170
 注③:前掲『新札幌市史 第3巻 通史3』p.170
 注④:前掲『札幌の地名がわかる本』p.96
 注⑤:前掲『さっぽろ文庫1 札幌地名考』pp.88-89
スポンサーサイト



≪ 軟石建物 2020有為転変ホーム白石区と豊平区の区境をめぐる地理的特異点 ⑦ ≫

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

管理人にのみ表示する

Track Back

TB URL

Home

 

プロフィール

keystonesapporo

Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

カレンダー

05 | 2020/06 | 07
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

最新記事

最新コメント

カテゴリ

閲覧者数(2015.9.4からカウント)

検索フォーム

ランキング

↑ クリックすると、ランキングが見れます。

月別アーカイブ

管理画面

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

最新トラックバック