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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 新型冠状病毒退散祈願

2019/12/08

北部軍司令官官邸が建てられた頃

 12月6日ブログでお伝えしましたように、9日(月)に放送予定のUHB(8ch)「みんテレ」(15:50-)“となりのレトロ”では月寒を紹介します。
 2017年の夏に「つきさっぷ郷土資料館」を撮った写真には、敷地に提灯が架かっていました。
つきさっぷ郷土資料館 170814撮影
 訪ねたのが8月14日だったからでしょう。
 
 この建物が当初の用途である大日本帝国陸軍の北部軍司令官官邸として使われたのは、戦時中の約5年です。戦後は、北大の「月寒学寮」、その後は現在に至る「つきさっぷ郷土資料館」として、第二、第三の“建物人生”(そんなコトバがあるか?)を送ってきました。数えてみると、それぞれ三十余年。現役よりはるかに長い“余生”です。戦争遺構が平和利用されるのは結構なことだと思います。夏祭り(?)(翌日は8月15日)の提灯は、象徴的な風景です。

 私は、建物が建てられたのを古い二次的文献により1940(昭和15)年と思っていましたが(末注①)、先日資料館でお聞きして1941(昭和16)年と知りました。北部軍司令部が置かれたのが1940年で、司令官官邸ができたのはその翌年だったのです。札幌市公文書館所蔵の史料で、1940年8月14日「起工」、1941年5月30日「竣功」という記録を確かめました(末注②)。
 なぜ建築年に触れるかというと、その当時の情勢を振り返りたかったからです。建物が建った1941年の12月8日、日本は米英に宣戦布告しました。同じ史料に、北部軍司令官濱本喜三郎が同日発した「訓示」という一文も記載されています。その一節を以下、引用します(太字)。
 北部軍管区ハ国土ノ北辺ニ位シ近ク敵国米、敵性蘇ノ二大強国ト相対シ北辺防衛及国策遂行上ノ要域を示ム
 対米、対蘇(ソ連)の二方面の前線的な拠点だったことも、あらためて知りました。同年(1941年)4月に日ソ中立条約が結ばれていますが、ソ連は「敵性」と認識されていたのですね(末注③)。同年6月にはドイツがソ連を攻撃しました。かたや前年(1940年)9月には「日独伊三国同盟」が成立しています。日本は、“味方”のドイツがソ連と敵対する中で、ソ連と中立を保ちえるか。ソ連もまた、戦争相手ドイツの同盟国に対して中立でありえるか。
 私は、ソ連が1945(昭和20)年8月に当時日本領の千島や南樺太を侵攻したのは国際法違反(中立条約を一方的に破棄した)と思ってきました。こういう近代史にも私は疎いのですが、日本の中枢はソ連の“抜き打ち”“騙し討ち”があることを重々察していたのではないでしょうか。もちろん、「だから仕方がなかった」ということではありません。
 という情勢下に建てられた司令官官邸です。

 注①:北海道近代建築研究会編『札幌の建築探訪』1998年、p.118ほか
 注②:「松田鶴彦資料」(複写)「軍司令部歴史案 自昭和16年7月7日至8月31日」のうち「軍司令部官舎施設建造物一覧表」
 注③:1941年7月の御前会議で決定された「情勢の推移に伴う帝国国策要綱」では対ソ戦が準備され、大本営は関東軍特別大演習を発動した(北海道編『新北海道史年表』1989年、p.537)。
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≪ なぜ月寒が北日本の軍事拠点になったか。(承前)ホーム新札幌駅の隙間(承前) ≫

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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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