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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2019/09/25

小樽の「なえぼ」

 小樽の「長橋なえぼ公園」です。
小樽 長橋なえぼ公園 看板
 手稲郷土史研究会主催のバスツアーで訪ねました(9月21日ブログ参照)。

 私はこの行事に参加するまで、ここの「なえぼ」が「苗圃」を呼び慣わしたものだとは知りませんでした。アイヌ語のナイ(川)ポ(「小さい」の接尾辞)に由来する札幌の「苗穂」(2014.12.23ブログ参照)とも、はっきりと区別できていなかったのです。長橋の苗圃(びょうほ)は、明治時代、旧北海道庁によって作られたと聞きました。当時の『小樽新聞』の記事で「なへぼ」とルビが振られたことにより、その読み方が定着してしまったそうです(末注①)。

 「以来七十五年間、お役人たちがいくらビョウホ、ナエハタと呼ばせようとしても小樽市民は、先祖代代ナエボという呼び方をついに改めなかった。そのうち、お役人の中にさえ、どっちがどっちだかわからなくなってしまった人もいたと見えて、苗圃を苗穂と誤記した古い図面が残っていたりするのは愉快である。明治十三年に札幌の苗穂に監獄ができて以来“苗穂送り”などという俗語がはやったことなども多少影響したのかもしれない」。(末注②)
 
 1997(平成9)年に小樽市の公園になってから、「なえぼ」と平仮名になったのでしょう。
小樽 長橋なえぼ公園 看板2
 黄色の矢印を付けた先に注目しました。

 「中央バス苗圃通り」と、漢字で書かれています。
小樽 長橋なえぼ公園 看板2 「中央バス苗圃通り」
 同行の札幌建築鑑賞会スタッフSさんから、「苗圃通」というバス停があると聞きました。小樽では苗圃がやはり「なえぼ」である証拠ですね。
 苗圃を「なえぼ」と読むのは‘湯桶読み’ですが、「田んぼ」という呼び方に「田ん圃」と当てる表記を見たことがあります。いま「たんぼ」と入力して変換したら、実際に「田圃」と出ました(末注③)。苗圃の「なえぼ」は苗穂もさることながら、「田圃」の「たんぼ」に引きずられた可能性もあります。

 ツアーに参加されていた別の方に「札幌の苗穂も、ビョウホだったんですか?」と訊かれ、私はしたり顔で「いえ、苗穂のほうはアイヌ語由来です」と答えました。かくいう私もわりと最近まで、苗畑に関係するのかなと思っていた口なのですが。Sさんによると、苗穂の語源として過去に苗圃説があったそうです(末注④)。
 前掲引用書の著者は林野庁の方で、苗圃について「私たち林業内部の人間はナエボとは呼ばない。昔は苗圃(ビョウホ)であり、戦後は少しやさしく苗畑(ナエハタ)というのが正式な呼び方である。一般の人たちも小樽以外では、ちゃんとビョウホ、ナエハタと呼んでくれている」(末注⑤)と記しています。「昔は苗圃(ビョウホ)」とのことですが、札幌市有林などではたしか今もビョウホが使われているようです。前掲引用では、小樽では苗圃が「なえぼ」と呼び慣わされることによって「苗穂」と誤記されることもあったらしいのですが、私はここで想像を膨らませました。札幌の苗穂=苗圃説は、小樽の苗圃=なえぼが‘逆輸入’されたのではないでしょうか。

 後志管内のとある町内、JR函館本線の踏切です。
JR函館本線 苗圃踏切
 「苗圃踏切」(画像は2016年9月撮影)。これは何と呼ばれているのかな。たぶん「びょうほ」だろうなあ。

 注①:渡辺惇『小樽苗圃じまんばなし集 なえぼ物語』1977年、pp.1-2
 注②:同上p.2
 注③:手元の漢和辞典(学研『新版 漢字源』1999年)によると、「田」は音で「デン」、訓で「た」。「田圃」の読みは「デンポ」(p.893)。「たんぼ」の「田圃」も、湯桶読みということになろう。余談ながら訓の「た」は、弥生時代に稲作とともに大陸からきたであろう「デン」が訛ったのではないだろうか。ちなみに、私のパソコンで「でんぽ」と打って変換しても「田圃」は出てこない。
 注④:札幌鉄道局編『北海道駅名の起源』1947年の「苗穂駅」の項に「明治の初年、開拓使が有用樹の植林に著眼し、此の地に苗の栽培を試み之を苗圃と称したが、明治四十年村名を定むるに当って『苗穂』としたものである」。
 注⑤:前掲『小樽苗圃じまんばなし集 なえぼ物語』p.1
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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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