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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2019/07/22

手稲稲積 余話

 本日放送されたuhb「みんテレ」の「となりのレトロ」では、手稲稲積公園周辺を紹介しました。
 「稲積」という地名について、昨年刊行された『札幌の地名がわかる本』で次のように記されています(p.161、太字)。
 手稲前田の一部地域の通称で、軽川・中の川・三樽別川に囲まれたエリアである。明治35年(1902)、稲積豊次郎がこの地に農場を開き、酪農を営んだことにちなむ。

 これは『さっぽろ文庫1 札幌地名考』1977年の以下記述を踏襲したものと思われます(p.134、太字)。
 稲積地区は、手稲前田の一部区域の通称名で、北発寒地区と接し、今後の発展が期待される地域である。稲積の名称は、明治三十五年(一九〇二)に小樽の人・稲積豊次郎が稲積農場を開いたことに由来している。 

 通称地名ですから厳密な境界線が引かれるものではないことを前提としつつ、私としては「稲積」の範囲を前掲諸文献よりも広く解釈したいと思います。拙ブログでもこれまでも綴ってきたとおり(2017.1.29ブログ2017.3.20ブログほか参照)、農場が現在の前田地区のみならず新発寒にも及んでいたこと、番組でお伝えしたように新発寒(『地名考』でいう「北発寒」)に「稲積橋」があること(「北発寒稲積会館」もある)などからです。

 もう一つ、「炭鉱1号橋」について。
炭鉱1号橋 再掲
 番組では由来をほぼ断定的な口調で述べましたが、管見では明確に裏付ける一次史料を見出せてません(2017.1.18ブログほか参照。“状況証拠”ということでご理解いただければ幸いです。

 「札幌市地質図」(『新札幌市史』第一巻1988年付録)で、本件橋の所在地を見ます。
札幌市地質図 新札幌市史第一巻付録 手稲 泥炭地
 黄色の矢印の先に示しました(正確には、橋は鉄路の南西側)。赤い線でなぞったのがJR函館線、これと交差する水色の直線が元炭鉱排水の追分川、濃い青が新川です(追分川は、新川と合流するあたりでは中の川)。

 JR函館線の北東側、新川の流域にかけて薄い緑色で塗られている一帯があります。「泥炭」です。新川や炭鉱排水が泥炭地の土地改良(排水)のために開削されたことが窺われます。また、鉄路が泥炭地と手稲山麓の硬い地盤の合間に通されたことも読み取れます。ただし、ちょうど炭鉱排水のあたりでは、泥炭地が南に入り込んでいます。のちにできた国道5号や札樽自動車道はこれを避けたかのように通じているのですが、明治の早い時期に敷かれた鉄道は泥炭地をかすめました。あらためて、鉄路を維持する上での排水の必要性が察せられます。
 ところで、くだんの排水路が新川と合流する地点のすぐ北、北東方向に濃桃色でなぞりました。これは「紅葉山砂丘」です。これをなぞったことについては後述します。

 色別標高図で、地形を鑑みます。
標高図 手稲 新川、炭鉱排水周辺 広域
 標高10m未満から10mごとに10色段彩で作成しました(国土地理院サイトから)。黄色の矢印が前掲図と同じく炭鉱排水(現追分川)とJR函館線の交点です。
 地形的にみると、炭鉱排水のところは標高10m未満の低地も南の奥深く入り込んでいます。地形地質の両面で、まさに「テイネ・イ」(=濡れているところ、末注①)だったのではないでしょうか。

 前掲地質図、標高図に「紅葉山砂丘」をなぞった(濃桃色)のは、番組の収録のときテレビ局のスタッフから疑問を呈されたからです。疑問というのは、「手稲山から流れ出ていた多くの川は、海に近い北のほうに流れていかなかったのですか?」。しかり。川は東北東方向へ流れました。そうさせたのは紅葉山砂丘だと思います。これは、縄文海進→「古石狩湾」→砂州形成→海退後、砂丘 になったものです(末注②)。炭鉱排水が掘られた一帯は大昔は海で、その後ラグーン(潟湖)になりました。海退して湿原となっても寒冷気候で植物が分解せず、泥炭地となったわけです。

 注①:前掲『札幌の地名がわかる本』p.152
 注②:「さっぽろ文庫77 地形と地質』1996年、pp.212-213
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≪ 宮部記念緑地ホーム描く会第65回、桑園を描きました。 ≫

Comment

遠藤さんの「炭鉱さん?」で笑っちゃいました。
いつも地元の語り部さんが出て来てくれるとは言え、地名の元になった「稲積さん」のご子孫が出て来てくれたことが斬新でした。
いずれ(厚別)山本さんなんかも出て来たりして。と妄想します。

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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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