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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2019/07/09

煤煙の詰らぬ不思議な煙突

 昨日ブログでお伝えした「札幌軟石共同販売所」の古写真は、札幌市公文書館所蔵の次の史料から採ったものです。
札幌軟石共同販売所 リーフレット ウラ
札幌軟石共同販売所 リーフレット オモテ

 ざら紙(北海道ではこの種の紙を「ざらし」と言うと思うが、私の幼少時、郷里の尾張地方では「藁半紙(わらばんし)」と言っていた)に印刷された、いわゆるリーフレットです。 サイズは、四つ折りで定形の小封筒くらいでしょう。
 このリーフレットは2019.3.25ブログで一度載せています。そのとき「文面からして、昭和戦前期に発行されたものです」と記しました。今から見るとなかなか奮っている文面です。参考までに、全文を末尾に載せておきますので、興味のおありの方はお読みください。
 
 「札幌軟石共同販売所」は1933(昭和8)年、石山で軟石を採掘する8業者によって作られました(『郷土誌さっぽろ 石山百年の歩み』1975年、p.36)。1943(昭和18)年には戦時経済統制により「札幌軟石株式会社」となり、これが昭和30年代まで続いたそうです。昨日ブログにも載せた「南消防団石山分団・石山水防倉庫」の建物は、札幌軟石が用いられているというのみならず、採石業者が結束して軟石の販売に取り組んだ拠点でした。
 ところで、この建物は昨日も述べたように、「石山信用組合」として1923(大正12)年に建てられたといいます。「信用組合」と軟石の共同販売はどう関わったのか。前述『石山百年の歩み』には「石山信用販売購買利用組合として建築された」とあります(同書p.34)。その時代、同組合は軟石の採掘もしていたそうです(同書p.36)。組合の有力な構成員に軟石採掘業者が名を連ねていたこともまた、想像に難くありません。というか、石材業者が組合を結成したとみるべきでしょうか。生産農家が共同組織を作って流通販売、金融等を展開する例にみられるとおり、軟石の業者もまた、採石から事業に乗り出していったことと思います。石材業者の一つであったⅠ家は、郵便局を経営し、定山渓鉄道の役員も務めました。 
 とまれ消防分団の建物は、旧郵便局の「ぽすとかん」、旧定鉄駅舎の「石山振興会館」と並んで地域の歴史を伝えるランドマーク=“土地のしるし”といえます。石山は土地のしるし的建物の密度が濃い。

 以下、リーフレットの全文です。
道産唯一の耐火石材 札幌軟石 札幌軟石共同販売所
 札幌軟石は明治四年黒田長官時代の採掘にはじまり爾来六十有余年の古き採石の歴史を有し本道唯一の耐火石材として用途頗る広く従来本道に於ける耐火建築と言へば札幌軟石を直感する程有名な石材であります
 然るにコンクリート等人造石の異常なる発達は一種の流行的となり為に札幌軟石の利用は一時其範囲を縮小されたるやの感がありましたが札幌軟石には耐火建築材として或は墓碑其他彫刻用として他の及ばざる特質と実用価値のある事を明瞭に認識さるゝに至りまして近来躍進的需用倍加の状勢にあります 弊所は札幌軟石の持つ特質と声価を増進せしめ六十余年来採石して尚無尽の天然資源を開発して本道石材工業界に寄与いたしたく昭和八年組合を組織し採取販売の統制と研究を続けて居ります 何卒御指導と御援助給はらん事をお願致します
 定山渓御遊覧の途次是非お立寄下さいまして採石実況の御視察を御待ち申しております
                 札幌郡豊平町(定山渓線)石切山駅前
                 札幌軟石共同販売所
                 電話三番

 道産唯一の耐火石材
 札幌軟石の特質と用途
耐火力強大

 札幌軟石は凝灰岩にして已に高度の熱に焼かれた火山灰の凝結した石材でありますから耐火力強大であります
加工彫刻に至便
 石質柔軟にして細粒均一なり凝力強く加工に至便であります
価格低廉
 如何なる寸法のものでも容易迅速に採石が出来価格低廉であります
理想的な耐火建築材
 石造建築の落付と渋味のある美観は建築界の一異色であります 札幌軟石の壁石は取付作業に便であるのみならず改築や移転の場合は打砕く事なく取はづして再び其石材を使用するに差支なく便利で経済であります
用途の広い石材
 建築材として倉庫 防火塀 温室 冷蔵庫 サイロウ等の防火と保温の建築に好適 壁布石、地束石、基礎算盤石踏石等の建築材としての他橋梁、下水、石垣階段等の土木用として用ひられます
 加工彫刻に至便でありますから墓碑、灯篭、鳥居、社標、門柱其他美術彫刻に用ひて安価で雅趣多い石材であります
 耐火力強大で窯に使用するも亀裂する事ありませんから各種窯に使用され鰊、鰯等の魚粕製造窯並に木炭製造の築窯には最適の石材として御賞讃されて居ります

煤煙の詰らぬ不思議な煙突
 札幌軟石の煙突は絶対に煤煙が詰りませんから何年経っても掃除の必要がありません
 而も安価で火防と経済を兼ね体裁がよく小工場一般住宅用煙突としておすゝめ致します

 札幌市(ママ)豊平町(定山渓線)石切山駅前
 札幌軟石共同販売所
 電話三番
   
(旧字体は通用字体にあらためたほか、改行の箇所は一文字空けた以外は原文のまま) 

 
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≪ 電柱クイズホーム7月2日「軟石建物クイズ」の答え ≫

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うちの母も藁半紙と言っていたので、普通だと思っておりましたが、母方の祖父の家系は岐阜県がルーツのようなので、ちょっと納得しました。
ちなみに、いまは古紙リサイクルの関係で、藁半紙の使用は減ってきていると聞きます。

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keystonesapporo

Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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