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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2019/07/11

安倍首相の発言をめぐって

 昨日ブログで出したクイズの答えは江別市文京台です。コメントを寄せてくださった方、ありがとうございます。 

 先月末大阪で開催された「G20大阪サミット」での安倍晋三首相の発言が批判を浴びたと聞きました。大阪城天守のエレベーター設置の件です。経緯を以下、時系列で追ってみます。
・6月28日夜:サミット夕食会のあいさつで阿部首相は「明治維新の混乱で大阪城の大半は焼失したが、天守閣は忠実に復元された。しかし、一つだけ大きなミスを犯した。エレベーターまで付けてしまった」と述べた(北海道新聞6月30日朝刊)。
・7月2日:首相は自民党の萩生田光一幹事長代行に次のように述べた(同上7月3日朝刊)。
 「取りようによっては障害者やお年寄りに不自由があっても仕方がない、と聞こえるかのような発言をしたことは、ちょっと遺憾だった」。
 「四百数十年前とまったく同じ物を作ったけど、エレベーターは(その時代に)なかったということをアピールしたかった」。
 「バリアフリーの社会に異論を唱えるような発言ではない」。
・同日:菅義偉官房長官は記者会見で「全く問題ない。大阪城の歴史的価値と復元の経緯に触れたものであり、批判されるような問題ではない」と述べた(同上)。

 首相の発言に対し、「障害者への配慮が足りない」といった批判が出たようです。これに対して首相は「遺憾」(クセモノな言葉ですね)としつつ、あくまでも趣旨は「復元の経緯」を述べたものであったとします。
 天守へのエレベーター設置を「大きなミス」と見るのは、いわば首相の価値観です。この価値観に対して「障害者への配慮が足りない」と見るのもまた、価値観といえましょう。安倍氏の価値観が一国の首相のそれとして妥当かどうかという問題はありますが、私が気になったのはむしろ、発言の前段です。すなわち「天守閣は忠実に復元された」という部分。これは価値観ではなく、事実認識としてどうでしょうか。

 大阪城天守が「忠実に復元された」のは事実か。例えば内装や設備です。私は実物に入ったことがないので公式サイトhttps://www.osakacastle.net/で見る限りですが、「忠実に」どころか、「復元」とはいいがたい。では構造は? 鉄筋コンクリート造ですよね(末注①)。復元されたのはあえていえば、外観のみに限られています(末注②)。エレベーター設置を「大きなミス」と判断する価値観以前に、大前提の事実認識がそもそも誤ってませんか。「四百数十年前とまったく同じ物を作った」? これは嘘でしょう。 

 念のため申し添えると、「忠実に復元」されていないから大阪城の現天守の価値が低いというつもりはありません。この建物は1931(昭和6)年に建てられた「近代建築」として高く評価すべきです。登録有形文化財となったのも、それゆえでしょう。エレベーター設置の是非は、昭和初期の近代建築として価値判断すべきと私は考えます。ならば、近代よりも前の国宝や重文建造物のバリアフリーはどう考えるべきか。それは本日取り上げたこととは別問題です。
 現政府は国内の文化財を観光振興にもっと役立てたいと腐心しているようですが、価値観以前の問題として文化財に関する事実認識の正確を期してほしいと思います。

 注①:越野武『時と人と 再訪日本 老眼遊記』2019年、p.285
 注②:一般に、昭和初期以降の城郭天守再建は「模擬復興」とされる。ウィキペディア「大阪城」によると「大坂城の天守は、豊臣大坂城と徳川大坂城のそれぞれで建っていた場所や外観が異なるが、復興天守閣では初層から4層までは徳川時代風の白漆喰壁とした一方、5層目は豊臣時代風に黒漆に金箔で虎や鶴(絵図では白鷺)の絵を描いている。この折衷に対しては諸々の議論があり、豊臣時代もしくは徳川時代どちらかの形式に統一すべきとの意見もある」(2019.7.8閲覧)。 もしそうなら、外観も「忠実に復元」といえるのか疑わしい。
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≪ 江別川沿いの軟石倉庫 ③ホーム電柱クイズ ≫

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1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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