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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2019/04/12

夕張のズイホク、ズイナン

 JR夕張支線・鹿ノ谷廃駅の前に建つ石造倉庫を尋ねたとき(4月7日ブログ参照)、持ち主の奥さんからお聴きした地名です。「鹿の谷が夕張の人口の中心に位置した」というお話に関連して、北と南に分けられていたと伺いました。
 奥さん「清水沢より北がズイホク、南がズイナンと言ってました」
 私「ズイホク? 『ズイ』って、どんな字ですか?」
 奥さん「『隧道』のズイです」
 私「ああ、トンネルの隧道ですか。つまり夕張トンネルで北と南に分けられていたのですね」
 奥さん「そうかもしれません」

 ここで地理を確認します(国土地理院サイトから)。
地理院地図 夕張 夕張川、志幌加別川流域
 夕張は主に、夕張川とその支流の志幌加別川の流域に集落、市街が形成されました。
 前掲図に示したマル数字は、以下の地名です。
 ①紅葉山(JR新夕張駅の所在地) ②:清水沢 ③鹿の谷 ④本町(中心市街地、市役所の所在地) ⑤丁未
 南端の紅葉山から北端の丁未まで、直線距離にして約17㎞のとても細長い谷沿いにマチが連なります。登川や滝ノ上、南部、鹿島などの地域は割愛しました。
 余談ながら、南北約17㎞というのを札幌に当てはめてみると、北区のJR篠路駅から南区の地下鉄真駒内駅の少し手前までの距離です。先日15年ぶりに夕張を訪ね、この谷沿いに多くの公営住宅が残っているのをあらためて目の当たりにしました。大半はすでに無人の気配です。これに夕張川の上流、南部や鹿島を含めると(ダム底に沈んだとはいえ)、私には想像を超えます。最盛時10万を超えた人口が今では1万を切りました。夕張の風景を札幌に移し替えて、あの膨大な公営住宅を担当している市職員は何人いるかと想うと、これまた私には堪えません。

 さて、夕張の「隧北」と「隧南」を分ける隧道すなわちトンネルと私が思った「夕張トンネル」は、上掲図で赤い矢印の先に示したところです。札夕線の由仁から夕張市街に至る峠を穿っています。
 しかし。
 北と南を分ける隧道=札夕線のトンネルというのも、これまた私の早合点と思い直しました。夕張トンネルは北に寄りすぎている印象です。では、隧道はどこか?

 地理院地図のスケールを大きくして、トンネルを探しました。
地理院地図 夕張支線廃線 稚南部トンネル
 夕張支線廃線で、鹿ノ谷廃駅と清水沢廃駅の間に見当たります。赤い○で囲ったところです。「稚南部トンネル」といいます。「ワッカナンベ」と読み、全長161m、開鑿されたのは1898(明治31)年です(末注①)。

 冒頭の小スケール地図を再掲し、廃線の稚南部トンネルの位置を示します。
地理院地図 夕張 夕張川、志幌加別川流域 稚南部トンネル
 黄色の矢印の先です。

 石造倉庫の奥さんの話をあらためて地図に照らして見ると、夕張の隧北、隧南は稚南部トンネルを境にしたのではないだろうか。夕張に詳しい方に、隧北、隧南についてお教えを乞いたいところです。
 ちなみに、地理院地図は上掲のスケールではもう、鉄路は消されていました。その上のスケールではなぜか、部分的にまだ残っています。そのうちこれも消えるでしょう。そうすると、隧北、隧南という俗称地名?の記憶も消えていくのかもしれません。
 いや、そもそも「稚南部」という地名がもう、夕張市の町名としてはないですね。ワッカ・ナム・ペッ(水・冷たい・沢)→稚南部→若鍋→若菜辺→若菜(末注②)。

 注①:川島令三編著『【図説】日本の鉄道 北海道ライン 全線・全駅・全配線 第3巻 道東・道北エリア』2016年、p.14、日本国有鉄道北海道総局『北海道鉄道百年史 上巻』1976年、p.130
 注②:鍋谷正雄『夕張の地名』1988年(角川書店『北海道の地名辞典』中、同氏執筆分の抜刷)、p.7、8。前述『北海道鉄道百年史』には「ワッカナンベトンネル」とカナ書きされているが、この書には稚南部に「わっかなんぶ」(p.7)「ワッカナンベ」(p.8)とルビが振られている。若鍋は、ワカナベ沢川沿いに「谷新夕張炭山」(谷七太郎経営の炭鉱か)の第二礦として開かれた「若鍋礦」にちなむ。ガス爆発事故が相次ぎ、「鍋は火を呼ぶという事から若菜辺の字をあてるようにな」った(同p.7)という。
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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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