札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。

2018/06/16

旧三菱鉱業寮に置かれた母子像

 先日の旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮の内覧会で、ひときわ目を惹いた逸品です。
旧三菱鉱業寮 母子像
 旧三菱鉱業寮の1階、玄関を入ってすぐの部屋に鎮座していました。

 作品名や作者名、由来などの説明は何もありません。 
旧三菱鉱業寮 母子像②
 その“無言”なたたずまいが、昭和戦前期の洋館の一室に特異な存在感を醸していたのです。あに、場違いと言うなかれ。

 本件建物の指定管理者となったN社の担当Gさんに、思わず私は「やあ、いいですね、コレ」と言ってしまいました。Gさんは苦笑いして曰く「私たちは、ここに置くのは反対したんですけどねえ」と。
 実は私は、本件彫像にタカを括っていました。「どこぞの誰かが、持て余したモノを札幌市に寄贈と称して押し付けたんだろうなあ」くらいに疎んじていたのです。というのは、だいぶ前、本件建物の一室が市の文化財課の物置で使われていて、その種の“ありがた迷惑”物件の収蔵場所になっていたからです(末注①)。

 内覧会のとき、やはり参加者からは「なんだ、コレは?」と話題になりました。案内してくださった角幸博先生(北大名誉教授、NPO法人「れきけん」理事長)によると、「日展会員の作品らしいが、詳しいことはよく判らない。もともとは玄関ホールに置かれていたので、なんらかの意味があったと思う。今後の調査が期待される」とのことでした。「炭鉱当時の(事故犠牲者の)慰霊のモニュメントかもしれない」とも。
 仔細は不明なるもスポットライトを浴びて、私は何がしかの霊気を感じました。化粧直しされて展示物なども一新された本件建物に、キッチュな、もとい、突然変異的な、いや人智の巧まざる効果をもたらしています。

 自慢するわけではありませんが、私は本件彫像を、建物の改修前にも脳裏に刻んでいました。
旧三菱鉱業寮 改修前 母子像
 2015年10月、まだ玄関ホールに置かれていたときに撮ったものです。何の自慢にもなりませんね。

 ただ、台座に貼られていた作者名も、画像に収めていました。
旧三菱鉱業寮 母子像 作者
 たぶん背後に回って、壁との隙間から撮ったのだと思います。現在は壁にぴったりくっつけて置かれているので、これを確認するのは難しいでしょう。これはちょっと自慢できるかも。

 ピンボケしていますが、「製作者 山畑 阿利一 製作年他詳細不明」と読めます(作者名には「やまはた ありいち」とルビ-末注②)。
 さらに、武井時紀先生(元札幌市文化財保護指導員)の著書で、次のような記述を見つけました(『おもしろいマチ―札幌』1995年、p.131 末注③)。
 永山邸が創建時のまま、現在まで残ることができたのは、三菱の力によるところが大きい。(中略)
 いま、当時をしのぶものは、新館(引用者注:旧三菱鉱業寮のこと)階段下にある彫刻(昭和三十九年、芦別から移した)と二階廊下の片隅に掲げられた三菱鉱業のポスター一枚があるだけである。三菱鉱業は昭和二十七年、三菱金属、さらに平成二年、三菱マテリアルと社名を変更し、平成二年三月、三菱大夕張鉱業所を閉山し、本道の石炭鉱業から全く手を引いた。永山邸を建てたのは永山武四郎である。しかしその後の保存に力を尽したのは三菱である。

 本件彫像は三菱鉱業(三菱金属)当時からのものだったのです。しかも「昭和三十九年、芦別から移した」という芦別には、三菱の芦別鉱業所がありました。同鉱業所は1964(昭和39)年に閉山しています(末注④)。閉山の際に札幌に持ってきたということでしょうか。三菱芦別を知る人に訊いたら、判るかもしれません。といっても、50年以上前だからなあ。

 とまれ角先生が推測する「慰霊」像という線が、現実味を帯びてきました。私の“ありがた迷惑”物件説は浅薄でした。

 注①:札幌市文化財課の名誉のために申し添えれば、“ありがた迷惑”云々は私の独自の解釈である。
 注②:山畑阿利一については右記サイト参照 → http://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9949.html
 注③:2017.11.4ブログ参照。武井先生の遺した記述の貴重をあらためて感じる。 
 注④:北海道芦別市サイト → http://www.city.ashibetsu.hokkaido.jp/kikaku/kikaku/enkaku.html 
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1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。

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