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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 新型冠状病毒退散祈願

2017/06/18

北大医学部管理棟のファサード

 昨年7月28日ブログで、北大医学部建物の正面に現れた古典様式について記しました。
北大医学部管理棟 正面
 これを見たとき、「いったい、何じゃらほい?」と私は思ったものです。
 先日催した札幌建築鑑賞会「大人の遠足」で、Ⅰ先生に本件の顛末について解説していただきました。仔細は、北海道医史学研究会という団体の会報『北辰』第10号2010年1月に医学部寺沢浩一先生がⅠ先生との連名で述べられています。「遠足」で配布した資料にその写しを載せましたが、一般にはなかなか見る機会がないと思いますので、かいつまんで紹介します。

 ひとことでいうとこの古典様式は、医学部旧本館の外観正面に施されていた意匠を再現したものです。旧本館は1923(大正12)年に建てられ、1967(昭和42)年頃解体されました。前掲画像の現建物(医学部管理棟)はその後に建てられ、2010年に改修されたものです。改修に当たり、「医学部創立九十周年記念事業」の一環としてかつての意匠が再現されました。道理で、キッチュな、もとい、なんとも不思議な印象を受けたわけです。

 ブロークンペディメント(破風、白い△の部分)にあしらわれたレリーフは「メダイヨンに植物」だそうです(メダイヨンは楕円形のメダル状のもの)。
北大医学部 管理棟 正面 レリーフ
 このレリーフは、モデルとされた建物を載せた外国の建築関係雑誌をⅠ先生が北大の図書館で見つけました。モデルではメダイヨンに人魚の意匠でしたが、「当時の日本では怪奇なモチーフを抽象化して受け入れやすい形にされることが一般であったため」(前掲書、Ⅰ先生)、植物に変えられたと見られます。その後、Ⅰ先生によってさらに見つけられた医学部本館の新たな設計図面には、レリーフの細部が詳しく描かれていました。
 前掲書では、本件レリーフは「当時、既に国内の洋館に使われるようになっていた『メダイヨンに植物』が見本だったと考えられる」としつつ、「医学的な意味は特に認められなかった」と結論付けています。私には、メダイオンの両脇に伸びた蔓状の二本が、聴診器に見えてしまうのだが。
 とまれ、これらの史料に基づき、2010年、改修された建物にレリーフが施されたのです。

 ちなみにⅠ先生は正面意匠全体の再現には、「やめたほうがいいですよ」とお勧めをしませんでした。たしかに、こういう擬古調というのは難しいですね。Ⅰ先生の指摘によると、ペディメントの下のデンティル(歯状飾り、縦長のギザギザ)やバルコニーの手すり子が簡略化されています。なるほど、そういうところでキッチュ感が醸されるのだなあ。私は本件を、新さっぽろにあるカラオケ屋のファサードと見紛うてしまいました。
 この建物もあと何十年かしたら、北大の他の様式的建築(古河講堂とか旧農学校校舎)のように風景に融け込むのだろうか。うーん。建物(の意匠)というのは、その時代の思想の一表現だと思う。ある意味では、擬古調が時代の怪しげな空気を伝えているといえるのかもしれない。こういうのに、ふっと靡いてしまう私でもあります。
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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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