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札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。 胆振東部地震お見舞い

2018/01/06

北海道の住宅文化をどう総括するか

 メディアを通して不特定多数の人に向けて語る場合もさることながら、講演と称して特定の聴衆を対象に話をするのも緊張感が漂います。紙媒体の場合は事前の校正で推敲できますが、講演の場合は、話す内容はあらかじめ準備するとしても、実際の流れというか空気の中でアドリブが飛び出す可能性もあります。いったん宙に放たれたコトバは取り返しがつきません。また、講演後の質疑などは、どこからどんな“弾”が飛んでくるか判ったものではなく、おそらく万全の準備というのは不可能でしょう。

 昨年の11月23日に催された「さっぽろ川めぐり講座」では、「札幌の川と市民のくらし・なりわい」というテーマで話をしたのですが、終わってからの質疑では「屯田兵屋など北海道の建築で防寒対策が遅れた原因は何か?」を問われました。「札幌建築鑑賞会」を名乗っている手前、「それは今日のテーマとは関係ありません」と言うのも気が引けて、次のように答えました。
 「遅れたというよりは、時代的な制約だったのではないでしょうか。津軽海峡をはさんで、いわゆる内地とは気候条件がまったく異なる体験というのは、それまでの日本人には無かったと思います。『家のつくりは夏を旨とすべし』という日本の在来的な考え方が抜けきれなかったことでしょう。反面、明治維新後、開拓使が石造りの建物を奨励し、札幌軟石という耐火断熱効果の高い石材が見つかったことも幸いして、本州に先駆けて作られていったということもあります」。

 これに対し、参加者からのアンケートで次のような意見が寄せられました。
 「琴似屯田兵村ではケプロンが西洋の耐寒住宅を奨励したが、担当の官僚の村橋久成も耐寒住宅にしたかったが、黒田清隆が予算が無いということで、村橋の提案を切り下げたので、予算のかかる耐寒住宅はできなかった。なので木造住宅しか作ることができなかった」。 
 「講師の勉強不足では?」とのご指摘です。あらためて北海道史をひもといたところ、高倉新一郎・関秀志『北海道の風土と歴史』1977年に、次のように書かれていました(p.203)。
 最初の兵屋である琴似の兵屋をつくるときなどは、壁付・天井張り・ペチカをつけ、ガラス戸を入れ、屋内作業までを考えた、当時としては理想的な住宅を計画したのだが、予算がないこと、材料がないこと、職人が得られないことなどが重なって、長屋のような普請に変更され、それが一つの伝統にさえなったのである。
 
 「予算がないこと、材料がないこと、職人が得られないことなどが重なって」を私の言葉でひっくるめれば「時代的な制約」だと思うのですが、具体的に列挙しないとダメなんですね。私が後段語った部分は、屯田兵屋に限らず北海道の入植地の開拓期の住宅については大筋間違ってないと思いますが(末注①)、間違っていないだけでは足りない。 勉強になるなあ。
 参加者の満足度はアンケート回答者60人中「とても満足」26名、「まあ満足」24名で、個別の感想でも「次回を期待」とか「現地を歩く企画も」という声も多く寄せられ、おおかたは好評だったと思います。しかしお一人でもこういう叱咤があると、鍛えられるものです。

 開拓使は洋風の官舎を建て、ケプロンが建言し、ほかならぬ黒田も1876(明治9)年に「家屋改良」告諭を出して防火耐寒建築を奨励していますが、寒冷地仕様が浸透しきれなかったことの裏返しでもあります(末注②)。経費の問題はもちろん大きかったのでしょうが、牢固たる和風在来の因習とあいまったと私には思えるのです。「明治維新後、北海道は日本の近代化のモデルとして開発が進みました」(1月3日ブログ参照)といっても、そこにはさまざまなせめぎ合いがあったことでしょう。
 
 注①:『北の生活文庫5 北海道の衣食と住まい』1997年、p.185参照
 注②:『さっぽろ文庫82 北の生活具』1997年、p.114参照
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Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。
逍遥する時空:札幌、歴史、地形図、地理、地誌、地名、地形、地質、軟石、石蔵、硬石、採掘場、煉瓦、サイロ、腰折れ屋根、地神碑、墓地、旧河道、暗渠、メム、古道、微地形、高低差、クランク、境界、橋、歩道橋、電柱、バス停、踏切、古レール、神社の玉垣、小祠、二宮金次郎、戦跡、古い樹、河川網図、都市計画図、住宅地図……

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