札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。

2017/10/15

時計台に座るクラーク先生

 10月13日と15日、札幌建築鑑賞会「大人の遠足」2017特別編で中心部の歴史的建物を巡りました。
大人の遠足2017 時計台
 北大大学院工学研究院のⅠ先生の案内で、時計台から道庁、植物園と歩きました。札幌市民が(市民でなくても?)時計台をじっくり鑑みるというのは、稀少な体験だと思います。

 時計台の2階に、クラーク先生が座っていました。
時計台 クラーク先生
 黒い布で覆われていたのですが、イタズラ心でめくってみたところ、いたのです。

 実は数日前の新聞に、「クラーク博士像 時計台にも」と報じられていました(北海道新聞10月12日朝刊)。以下、記事の一部を引用します(太字)。
 時計台は札幌農学校(現北大)の初代教頭だった博士の構想で演武場として建設されており、観光客から博士の像を求める声が多かった。時計台完成記念日の16日、お披露目の式典が行われる。
 像は高さ135センチの合成樹脂製で、幅180センチ、奥行き80センチの木製長いすの端に腰掛けた姿。2階ホールに置かれ、見学者が座ったり、一緒に記念撮影したりできる。時計台を管理運営する企業が約200万円で製作した。

 
 「お披露目」に先立って、失礼ながらめくってしまいました。
 時計台で配られているリーフレットによると、この建物が建てられたのは1878(明治11)年で、10月16日に落成式が催されています。明日で満139年です。創建時、時計塔は備わってませんでした。時計が付いたのは1881(明治14)年です。クラーク先生は時計台ができる前の1876(明治9)年に札幌に来て、翌1877(明治10)年に去っています。よって、先生はこの建物を直接見ることも、時を告げる鐘の音を聞くこともなく、ましてや室内に座ることはありませんでした。が、139年を経て2階に座ることに相成ったのです。「観光客から博士の像を求める声が多かった」とは知らなかった。

 およそ人物像というモノは、印象操作という効果があります。本件坐像も今後、先生があたかもかつてここで腰掛けていたかのごとき伝説に寄与するかもしれません。ま、観光名所というのは、えてしてキッチュな時空が漂うものです。史実に忠実であれかしといったベクトルは、はたらきづらい。クラーク像も、先生が足を運んでいない羊ケ丘に、すでにあります。北大の現キャンパスですら、先生の滞在中はゆかりがなかったが(末注①)、胸像が置かれて観光名所になっています。もう、「何でもあり」ですね。
 
 北大のクラーク像は、ン十年前、NHKの「新日本紀行」で放送されて観光客が増えたと聞きます(末注②)。のみならず放送の翌年、北大の入試志願者はかなり増えています(末注③)。かくいう私自身がン十年前、印象操作に刷り込まれて、北海道に憧れたクチです。挙句、内地で生れ育ったにもかかわらず、北海道に永住する(たぶん)こととなりました。かような印象操作を否定することは、自分の存在を否定することにつながりかねません。いずい(北海道弁)ところです。

 注①:『さっぽろ文庫50 開拓使時代』1989年、口絵「明治十年」(クラーク博士の足跡)参照
 注②:羊ケ丘に立像が建てられたのは、大学が‘観光公害’を減じるため車両を規制するに至ったという事情があるという。「さっぽろ羊ヶ丘展望台」サイト参照
 注③:NHK「新日本紀行」で「都ぞ弥生 北海道・北大恵迪寮」が放送されたのが1975(昭和50)年。『北大百二十五年史 論文・資料編』2003年によると、北大の入試志願者は1974年13,040名(定員2,120名に対して6.2倍)、1975年は12,796名(定員2,120名に対して6.0倍)だったが、1976年は14,889名(定員2,120名に対して7.0倍)、1977年15,534名(定員2,195名に対して7.1倍)となった(p.871、pp.883-884)。もちろん、テレビの影響などとは正史には書かれていない。私の憶測。
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1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。

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