札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。

2017/10/13

豊平 「やまじゅういち」軟石倉庫 ②

 札幌建築鑑賞会スタッフSさんが古地図で、豊平の「やまじゅういち」印を確認してくださいました。
札幌市卓上案内 豊平周辺
 まず「札幌市卓上案内」1950(昭和25)年(原図は札幌市公文書館蔵)。方位はおおむね2時の向きが北です。

 赤い線で囲ったところを拡大すると…。
札幌市卓上案内 やまじゅういち倉庫
 室蘭街道(画像中、札幌市電の軌道の線が描かれている道)に面して「○○醤油醸造所」(○○には固有名詞で経営者Ⅰさんの苗字)、その背後に「∧十一倉庫」と書かれています。

 次に「札幌市制紀念人名案内図」1922(大正11)年(原図は札幌市中央図書館蔵)。
札幌市制紀念人名案内図 豊平周辺
 方位はおおむね5時の向きが北です。
 赤い○で囲ったところに「∧十一○○」と書かれています(○○には同じくⅠさんの苗字)。「十一」の「一」の右上に「、」が付いていますが、「土」の俗字と書き間違えられたのでしょう。

 豊平には醸造業の店が多くあり、抜粋した一帯だけでもほかに橙色の○で囲った2軒がそうです(末注①)。どちらも、札幌軟石の蔵が現存しています。
 その一棟が、こちらです。
宮越屋珈琲豊平店
 「カネさ K商店」の雑穀蔵でした(印「カネさ」の「さ」は変体仮名)。K商店はもともと雑穀問屋で、戦後味噌醤油の醸造業に転じたといいます(末注②)。昭和初期築の石蔵は1991(平成3)年、中華料理店の店舗に再利用された後、2002(平成14)年から喫茶店となりました(末注③)。

 すぐ近くのもう一棟はSさん宅石蔵です。地元の郷土史家Nさんに「カネ吉 S商店」と教えていただきました。前掲「人名案内図」には、「カネ吉○○店」と書かれています(○○にはSさんの苗字)。
豊平 S宅軟石倉庫
 建築年は不詳ですが、前述の「∧十一」「カネさ」の石蔵から類推するに、大正~昭和初期ではないでしょうか。豊平では大正期に幾度か大火が起きていますので、その後ではないかとも思います(末注④)。

 豊平で味噌醤油の醸造業が多かったのは、札幌扇状地「平岸面」の扇端、とまでは行かないが、比較的扇端に近い一帯という地形にも由来すると私は睨みました。豊平川の対岸、札幌扇状地「札幌面」でも醸造業(こちらは日本清酒をはじめ酒造)が盛んでした。平岸面は札幌面に比べると古い時代の扇状地ですが、このあたりだとやはり伏流水に恵まれていたと想うのですが…。
 最近、平岸面因縁説にハマっています(10月4日11日各ブログ参照)。一つハマると、どうもクセになりますね。

 注①:『郷土史 豊平地区の140年 1857-1997』1997年、p.460
 注②:『さっぽろ文庫78 老舗と界隈』1996年、p.260
 注③:『さっぽろ再生建物案内』第2版2003年、p.81
 注④:前掲『郷土史 豊平地区の140年 1857-1997』pp.246-248。ただし同書には、1919(大正8)年の大火でカネ吉S商店の石蔵が類焼し、「灰じんに帰してしまった」とある(p.246)。
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1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。

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