札幌時空逍遥

札幌の街を、時間・空間・人間的に楽しんでいます。

2017/09/02

東区本町 Fさん宅 軟石倉庫

 本件軟石倉庫も札幌建築鑑賞会「札幌軟石発掘大作戦」で存在を確認したものですが、建築年や用途は未把握でした。
東区本町 Fさん宅 軟石倉庫
 軟石の表面仕上げはツルメ、軒と開口部にコンクリートを廻しています。妻壁に家紋(丸に木瓜か)。軒は蛇腹に折り、妻側はブロークンペディメント風です。軟石の厚み(1尺幅)からして、木骨ではなく本石造と思われます。
 建物の立地と雰囲気から、私は農業系の蔵と分類していました。「蔵」か「倉庫」かの識別は悩ましいのですが(末注)、平入り開口部の大きさからすると、倉庫とすべきだったかもしれません。

 このたび持ち主のFさんにお話を伺うことができました。元はタマネギ倉庫だったそうです。建築年は定かでないのですが、「タマネギを始めたのは、大正8年生まれの祖父が戦後復員してから」という話からして、昭和20-30年代と思われます。近くに北13条大橋ができるとき、位置を少し移したとのことです。建物の妻面が少し凸状に膨らんでいるのは、移築に伴う変化かもしれません。なお、Fさん宅は祖父で入植三代目で、タマネギの前は酪農を営んでいました。

 本件を当初「蔵」と識別したのは、妻壁に家紋が刻まれていることが当時の私の先入観で影響したのでしょう。
本町 Fさん宅倉庫 家紋
 東区や北区の農業系の倉庫の多くは苗字の頭文字(漢字一文字、ときにローマ字)を妻壁に刻んでいるので、家紋というところに差異を見たのです。しかし、同じ東区でも、家紋付きのタマネギ倉庫が散見されます。場所は本件に比較的近い、伏古や東苗穂です(2015.8.20ブログ
2017.5.28ブログ2017.5.31ブログ参照)。頭文字付きは主として丘珠から篠路にかけて分布していますので、地域的な微差があるようです。

 Fさんは「家紋も付いていることだし、これからもできるだけ大事にしていきたいですね」と語ってくれました。軟石ファンとして、ありがたいことです。

 軟石建物の築年別内訳は、昭和戦後期築が一棟増えました(カッコ内は母数412棟に対する比率)。
  明治期:16棟(3.9%) 
  大正期:27棟(6.6%)
  昭和戦前期:51棟(12.4%)
  昭和戦後期:99棟(24.0%)
  昭和後期-平成期:48棟(11.7%)
  不詳:171棟(41.5%)

 注:2017.2.16ブログ参照。
 蔵⇒和風在来的な意匠、特徴的なプロポーション(2階建て、妻側に開口部あり、観音開きの扉、棟飾りなどの装飾)。用途上は帳簿類や什器、貴重品などの収蔵。文庫蔵、衣裳蔵、質蔵、店蔵など。
 倉庫⇒切妻平屋または腰折れ屋根、装飾的には簡素、大きめの出入り口、用途上は農作物や農機具、家畜などの保管収容。
スポンサーサイト

ホーム

Home

 

プロフィール

keystonesapporo

Author:keystonesapporo
1991年から札幌建築鑑賞会を続けてきました。

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新記事

最新コメント

カテゴリ

月別アーカイブ

最新トラックバック

閲覧者数(2015.9.4からカウント)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR